2005年度 羽田野研合同夏期セミナーのしおり

東京大学・生産技術研究所・羽田野研究室では、二泊三日で集中講義を聴くという夏合宿を企画しました。
講師は青山学院大学・理工学部・物理数理学科・御領潤さんです。
御領さんは場の理論を物性物理にも応用する仕事をしておられます。
今回は「チャーン・サイモン項の物理」について初歩的なところから話して頂き、
質疑応答を交えながら、このテクニックを完全に自分のものにすることを目指します。
将来的に自分の研究に必要になったときにノートを見返せばすぐに使えるようにするのが目標です。

折角の機会ですので、ご興味のある方は参加下さいますよう、お誘い申し上げます。

以下、合宿の詳細です。

宿泊先

費用

日程

2005年8月午前  午後
27日(土) 集合(12:00) 昼食:カツ丼 (12:30〜) 講義 (14:00〜17:00) 夕食(18:30〜)
28日(日) 朝食(8:00〜) 講義 (9:00〜12:00) 昼食:カレー(12:30〜) 自由時間 (レクリエーション) 夕食
29日(月) 朝食(8:00〜) 講義 (9:00〜12:00) 昼食後、解散

講師

講義内容

チャーン・サイモン項の物理

ゲージ対称性の要求のもと、2次元空間の電磁気理論では一階微分のみを含み完全反対称な電磁気ポテンシャルの 2次の項であるチャーン・サイモン項が存在する事が許される。実際、空間反転対称性(P)や時間反転対称性(T)を破る 2次元電子系において、電子の自由度を繰り込むことにより dynamical に生成される事が知られている。この項は微分の 階数が低いことから長波長・低エネルギー領域において支配的であり、完全反対称形であることからPおよびTを破る 電磁現象(例えば、ホール効果、カー効果等々)を引き起こす。

チャーン・サイモン項には非常に豊富な物理がある。これまでに
(い)universalな物理量のみであらわされる係数を持つこと、2-loop以上の補正を受けないこと(非繰り込み定理)やトポロジカル普遍量との関連、
(ろ)量子異常との関連、
(は)量子ホール効果への応用...etc、
が調べられてきており、definite な statement が数多く得られると同時に現実の物理系への応用もあり大変興味深い研究対象とされてきた。最近でも
(に)時間反転および空間反転対称性を自発的に破る超伝導体、
(ほ)スピン量子ホール効果...etc
への応用が議論され、今後さらなる発展があることが期待されている。

講義ではまずPやTを破る電子系の最も簡単な模型として2次元空間の有限質量ディラック理論 (massive Dirac theory) を 用い、具体的に繰り込みの計算を行ってチャーン・サイモン項が生成される事を見る。そして重要事項(い)、(ろ)、および (は)を概観した後、最近の進展(に)、および(ほ)について議論させていただければと考えている。

備考

参加者名簿(敬称略・順不同)