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教員紹介HP:http://maildbs.c.u-tokyo.ac.jp/~torii/


研究テーマ:レーザー冷却、量子縮退原子気体の物理


研究内容:

レーザーを用いて気体原子を冷却または捕獲する「レーザー冷却」という研究分野は、1980年代後半から飛躍的に発展し、1995年にはマクロな数の原子が量子力学的に許される最低エネルギー状態を占めるボース・アインシュタイン凝縮(BEC)が実現されました。BECは原子間相互作用が制御できる理想的な量子凝縮系として、またはコヒーレントな物質波((原子レーザー)として、理論と実験を問わず多くの研究者の興味を引き続け、現在では原子物理学、凝縮系物理学、量子光学などを取り込む大きなサブフィールドを形成しています。また近年では、量子縮退分子の生成や、極低温フェルミ原子気体の物理もホットなトピックスになっています。以下に本研究室が取り組んでいるテーマを紹介します。


ボース凝縮体と電磁波との相互作用の研究


熱的原子集団と違い、単一の量子状態にある(コヒーレントな)ボース凝縮体は、電磁波との相互作用において、種々の協調効果を表します。その1つが「超放射」と呼ばれる現象で、マクロな数の原子があたかも巨大な双極子モーメントを持つ1つの「スーパー原子」として電磁波と相互作用します。この現象を利用することにより、ボース凝縮体を用いた光の量子メモリー、任意光子発生、エンタングルした原子対の生成などを目指しています。


フェルミ縮退原子気体を用いた物理


液体ヘリウムや超伝導体といった凝縮系では、粒子間相互作用が極めて大きく、また制御が困難であるのに対し、原子気体では、磁場を用いて原子間相互作用をゼロから任意の大きさにまで調節することができる(フェッシュバッハ共鳴)。我々はフェルミオンである87Sr原子を87Rb原子との共同冷却によってフェルミ縮退させ、フェッシュバッハ共鳴を用いた超伝導体の量子シュミレーションや極低温極性分子の物性といった新しい物理の開拓を目指しています。

(上)Rb原子ボース・アインシュタイン凝縮体生成装置。凝縮した原子数では世界最高(〜107個)を誇る。(下)原子気体のBEC相転移を表す吸収画像。左図が熱的原子集団、右図が純粋なボース凝縮体。このように、我々はボース凝縮体の波動関数を直接観測することができる。