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研究テーマ: 物質の極限状態とその相対論的原子核衝突における時空発展


研究内容:

現在、米国のブルックヘブン国立研究所(BNL)では、RHIC ( Relativistic Heavy-Ion Collider ) によって原子核を超相対論的エネルギー(核子当たり 100GeV)に加速して正面衝突させ、高温・高密度の物質をつくる実験が行われています。スイスにある欧州原子核研究機構(CERN)でも、LHC ( Large Hadron Collider ) をつかった更に高いエネルギー(核子当たり2TeV以上)での原子核衝突実験が2010年から始まっています。このような高エネルギーの 原子核衝突では、最初に反応に関与する自由度は核子やハドロンではなく、 その内部自由度(クォークやグルーオン)が直接関与し、原子核を構成する パートン集団が互いに通過した後、その背後にもたくさんのクォークや グルーオンがランダムに励起されてプラズマ状態になると考えられています。 クォーク・グルオンプラズマは高温の初期宇宙において存在していた原始物質 で、宇宙の膨張・冷却によってハドロンの集団へと進化したと考えられていますが、 原子核衝突の場合にも、非常に短い時間にハドロンに崩壊すると予想されます。 従って、クォーク・グルオンプラズマが実際できたことを検証する為にも、 その生成から崩壊までの時空発展の過程を理論的に理解することが重要な研究課題です。私たちは、この問題を、場の量子論から、相対論的流体力学、 運動論、統計力学等の様々な手法を用いて研究しています。

パイ中間子の発生源のイメージの平均場による歪みの計算例:左側上は斥力

の場合、右側上は引力の場合、下側の図はそれぞれに吸収の効果を入れた場合

K. Hattori, T.Matsui, Prog. Theor. Phys. 122 (2009) 1301から)