研究室HP : http://folding.c.u-tokyo.ac.jp/


教員紹介HP : http://bio.c.u-tokyo.ac.jp/laboratories/arai.html


研究テーマ:蛋白質の物理学と分子設計


研究内容:

私たちの目標は、DNAに書かれた「生命のプログラム」を解き明かし、その知見を社会に役立てることです。生命のプログラムの解読は、今世紀の最重要課題の一つであり、物理法則の発見に匹敵するチャレンジングな課題です。この目標に向かって、次のような研究を行っています。


1.蛋白質の物理学: フォールディング問題を解く


 DNAに書かれた遺伝情報は、RNAに転写され、蛋白質へと翻訳されます。合成された蛋白質は、特異的な立体構造を形成する(フォールディングする)ことによって機能を発揮します。しかし、蛋白質のフォールディング機構は未解明であり、「第二の遺伝暗号解読問題」と呼ばれています。これまでの研究から、蛋白質の構造を決める情報はアミノ酸配列にコードされており、蛋白質の天然状態は系の自由エネルギー最小状態に対応すると考えられています。したがって、蛋白質のフォールディング問題は熱統計力学によって記述でき、物理学の対象となります。この問題の解決を目指して、実験と理論の両面から研究を進めます。また、アミノ酸配列情報のみから蛋白質の構造・機能を予測する方法の開発を目指します。さらに、構造・機能相関の新たなパラダイムである天然変性蛋白質の物性解明を目指します。


2.産業や医療に役立つ蛋白質をデザインする


 蛋白質の様々な働きは、産業や医療にも役立ちます。目的に応じて蛋白質を自由自在にデザインできたら、私たちの生活はとても豊かになるでしょう。現在私たちは、「バイオエネルギー」をつくるための蛋白質デザインに取り組んでいます。バイオエネルギーとは、生物から作られる軽油、重油、エタノール等のことであり、化石資源や原子力発電などに代替するエネルギーとして注目されています。このような物質生産を行う蛋白質(酵素)を高活性化させ、バイオエネルギー生産の実用化を目指します。そのためには手段を選ばずに、全力で取り組んでいきます。

A, 研究内容の概略図。B, 蛋白質のフォールディング反応の速度論。C,扱っている蛋白質の例(左から、アルカン合成関連酵素、HIV-1 Tat、抗体結合蛋白質)。D, 蛋白質のNMRスペクトル。E, 熱力学。F, 分光測定。G, 実験室の様子。