羽田野研究室セミナー 日時:2005年10月17日(月)10:00〜 場所:東京大学・生産技術研究所・羽田野研究室 Bw801 経済物理学の新たな応用として、競馬における勝馬投票について考察する。日本の中央競馬における勝馬投票は、運営者である中央競馬会が売上の一定額(約25%)を控除し、残りの金額を的中者に投票額に応じて分配する。レース結果は、馬の能力とともにその時々の不確定な要素にも大きく左右される。その意味で、ハイリスクな投機的経済活動のモデルと見ることも出来る。本講演では、中央競馬の単勝馬券のオッズ分布に注目し、全オッズと勝馬のオッズのそれぞれが異なる指数の冪分布をとることを発見した。さらに、この冪分布を再現する現実的な理論模型を提案し、投票者の経済力による損益分岐、持ち金分布の時間変化などの考察を行った。それによると、競馬会による控除にも関わらず利益を上げられるのは、全体の3割程度。その内訳を見ると大口の馬券購入者よりも小口購入者の方が若干比率が高くなる。また、高倍率側で資金回収率の期待値が1を上回る傾向があることもわかった。このことは、小口で高倍率馬券を複数購入する戦略が有効であることを示唆している。モデルの普遍性の検証、実データの精度の改善などが今後の課題である。