講師:田代 徹さん(お茶大・物理)

タイトル:自己重力系の準定常状態近傍のダイナミクスを記述する確率過程モデル

概要:たくさんの構成要素が自分達の重力だけで相互作用するシステムを,自己重力系という.例えば星の集団である球状星団や銀河は自己重力系の好例である.自己重力系の準定常状態における密度分布は,平衡統計物理学では記述できない特異的なものが存在することが知られており,開放系,非開放系といった各境界条件に対して独立のモデルが提唱され,特異性が生じる原理を明らかにしようとする試みがなされてきた.これらモデルは共通して,Maxwell-Boltzmann分布にフィッティングパラメータとして新たな変数を導入し,特異性を記述しようとしている. 本講演ではまず,それら特異な数密度とモデルの概説を行う.次に多体系の中心付近では普遍的な構造があることを示す.そして,講演者が考えた確率過程モデルを提示し,対応するFokker-Planck方程式の定常解として,その普遍的な構造が導出されることを示す.さらに,今までのモデルで使われてきたフィッティングパラメータの物理的意味を明らかにする.