題目:「非整合らせん磁性体における電子状態の局在-非局在」 要旨: ランダム系, 非整合系, 準結晶系などの非周期系におけ る電子状態の 局在・非局在性は,その特異な伝導性などに対する興味から 古くから多くの研究がなされてきた。 本研究では、らせんスピン構造をもつ遷移金属酸化物系において、 らせんピッチの非整合性に起因する 電子状態の局在・非局在性を詳しく調べた[1]。 我々は、 (A)非整合らせんスピン構造による平均場, (B)スピン軌道相互作用, (C)立方対称配位子場, (D)酸素を介しての電子の飛び移りの4つの微視的効果を全て取り込 んだ 多軌道のモデルを用いて解析を行った[1]。 その結果スピン軌道相互作用が強い場合には、 (i)軌道の種類, (ii)らせんのピッチ, (iii)スピン回転 面の方向 などに依存して、電子状態はらせん軸方向に局在-非局在の 複雑な様相を示すことが明らかになった。 また有効的なスピン・軌道多重項ごとのモデルを導出することにより、 ある種のゲージ変換によって非整合ポテンシャルの効果を消せるか否 かが、 局在・非局在性に大きな違いを与えていることを明らかにした。 [1] Shu Tanaka, Hosho Katsura and Naoto Nagaosa "Electron Localization or delocalization in incommensurate Helical Magnets", cond-mat/0603492, Phys. Rev. Lett., to be appear in.