表題：
複雑ネットワークと関連する離散確率過程


要旨：
複雑ネットワーク研究と関連する離散確率過程について，我々が行った研究から
２つ紹介する．
１つめはネットワーク生成問題と関連している壺モデルと呼ばれる確率模型であ
る．特に不規則性を持っている壺モデルについて，その解析的な取り扱いや実空
間凝縮現象などについて説明する．
２つめは化学反応系のダイナミクスに関連した話題である．細胞内反応などの
「小さな系」においては，分子の数が少ないために「大きな揺らぎ」や「離散
性」を考慮した解析が重要になると期待される．化学反応は一般にマスター方程
式を用いて記述されるが，マスター方程式の離散性を失わずに（近似）計算する
ための手法は，まだ発展途上である．本セミナーでは，第二量子化法と変分法を
用いることにより，離散的な性質を失わずにマスター方程式を近似する方法につ
いて述べる．

参考：
（ネットワーク生成問題関連）
[1] J. Ohkubo, M. Yasuda, and K. Tanaka, Phys. Rev. E. 72, 065104(R) (2005).
[2] J. Ohkubo, M. Yasuda, and K. Tanaka, J. Phys. Soc. Jpn. 75, 074802
(2006). Erratum: 76, 048001 (2007)
[3] J. Ohkubo, Phys. Rev. E, in press (Preprint: arXiv:0707.4519).
（マスター方程式関連）
[4] Jun Ohkubo, J. Stat. Mech. P09017 (2007).

 
東京大学物性研究所　押川研究室
大久保　潤 (Jun Ohkubo)